人間界の商店街で明日に迫ったバレンタインの買い物を急ぎ済ませると
ネコ娘は足早に横丁を過ぎ、ゲゲゲの森の奥深くにある自宅へと向かった。
−−−今年もみんな、喜んでくれるかな・・・?−−−
砂掛けに子泣き、一反木綿やロクロ・・・横丁の皆の笑顔が浮かび
ネコ娘の口元も自然と綻ぶ。
でも・・・彼女が一番喜ばせたい相手・・・鬼太郎は・・・
きっと今年も然して興味が無さそうな顔で受け取るのだろう・・・
おまけに
『ネコ娘は人間界に毒され過ぎだよねぇ・・・』
などと、のたまう。
しっかり渡したチョコを食べる癖に・・・だ。
ネコ娘は自宅の玄関を開け、誰もいない部屋に向かって溜息雑じりに呟いた。
「鬼太郎のバカ・・・鈍感・・・」
「誰がバカで鈍感だって?」
誰もいないはずの部屋からショイと鬼太郎が顔を出し、
ネコ娘は飛び上がって驚く。
「ギニャッ!!な・・・なんでいるのよ?」
「なんでって・・・ただちょっと遊びにね・・・
ネコ娘が忙しいなら帰るけど・・・?」
「全然!!私は全然忙しくにゃい!!」
慌てて首を横に振り、玄関を上がる。
「そう・・・なら良かった・・・」
そう言う鬼太郎の唇が薄い笑みを象ったことに、この時、ネコ娘は気付かなかった・・・
鬼太郎にお茶と菓子を出すと、
「ちょっと明日の用意しちゃうね!」
ピンクのエプロンを着け台所に立った。
今は自分でチョコを削らなくても、湯せん用の削ったチョコが売っているし、
ハンドミキサーを使えば簡単にメレンゲも作れる。
それにチョコ作りは毎年のことでもう手慣れたものだ。
程無くしてオーブンから甘い香りが部屋中に漂ってきた。
それでも・・・
−−−鬼太郎は明日がバレンタインだってことも分かってないのよね・・・きっと・・・−−−
小さくひとつ溜息を吐き振り返ると、そこにいる筈の鬼太郎の姿が見当たらない。
「鬼太郎?」
ネコ娘の呼び掛けに彼が風呂場の方から戻って来た。
「ネコ娘・・・お風呂の用意出来たから入っておいでよ」
「えっ?」
何故唐突にお風呂なのか・・・意味が分からず怪訝な表情を浮かべるネコ娘の手を取り
鏡の前へと連れて行く。
「ほら・・・顔も髪もチョコとクリームだらけだよ」
「にゃっ!」
「だから・・・ね・・・」
ネコ娘の耳元に鬼太郎が唇を寄せ、吐息雑じりにそう囁くと
身体を一瞬ピクリと強張らせた彼女が頬を染め小さくコクリと頷いた。
−−−イイコだ・・・ネコ娘・・・−−−
ネコ娘がのろのろと身に着けていた全ての物を脱ぎ、風呂場の扉を開けた。
「にゃっ!!何これ?!!」
風呂場中に充満する甘ったるい香りと風呂桶いっぱいに入れられた泥のような茶色い液体に
ネコ娘が叫ぶ。
「何って・・・チョコレートに決まってるじゃないか・・・」
いつの間に入って来たのか、鬼太郎がクスクス笑いながら一糸纏わぬ姿で立っている。
「いにゃぁん!!見ないでよぅ!」
同じく何も纏っていないネコ娘は両手で胸を隠し座り込むが、
鬼太郎は彼女に近づくとヒョイと抱き上げ、ドロドロに溶けたチョコレートの風呂桶の中に
彼女の身を沈めた。
チョコレート風呂の中のネコ娘を熱を帯びた鬼太郎の隻眼が見つめ、
ペロリと舌舐めづりをする。
「き・・・鬼太郎・・・?」
そのいつもとは違う表情にネコ娘は戸惑ったような声色で彼の名を呼ぶ。
「・・・皆と同じチョコレートも勿論嬉しいけど・・・ボクは結構欲深いんだよ・・・
ねぇ・・・ネコ娘・・・?」
鬼太郎に抱えられ風呂桶から出されたネコ娘の身体はもうすっかりチョコのコーティングが
施されていた。
彼の舌が彼女の首筋から鎖骨・・・そして、柔らかくも張りのある胸へと這わされると
その証の様にチョコが舐め取られ、下から白い肌が現れる。
いつもはピンクの胸の蕾も今はその色を隠しているが、鬼太郎の唇と舌が
入念にチョコを舐め取っていく・・・
「にゃ・・・あぁん・・・きたろ・・・お願い・・・もう立ってられ・・・にゃ・・・」
彼女の甘い懇願に鬼太郎の隻眼が弧を描き、彼女を跪かせる。
そして、一掬い風呂桶の中のチョコを掬うと、今度は脈打ち隆起する彼自身を
コーティングした。
「いつもチョコ、貰うばかりじゃ悪いから・・・ね・・・」
ケロッとそんなことを言う鬼太郎をネコ娘は睨むが、艶を帯び潤んだ瞳では
効果など無い。
彼の欲情を煽るだけだということを彼女は全く分かっていないのだろう・・・
チョコに塗れた鬼太郎自身を、ネコ娘は口に含み舌を絡ませた。
首の部分や裏の縫い目をザリザリした舌が丁寧になぞり、吸い込むように口を窄め
彼の動きに合わせると、ネコ娘の髪に埋められていた彼の指に力が籠るのが分かった。
「・・・くっ・・・」
ネコ娘の喉の奥に鬼太郎自身から吐き出されたドロリと濃い液体が流れ込む。
・・・コクリ・・・
喉を上下させネコ娘がそれを飲み干すと、そのまま鬼太郎に組み敷かれた。
両足の間に隠れて咲くピンクの花は、もう待ち切れないようにヒクつき
透明の蜜を滴らせている。
「待ち切れなかった?・・・すっかりチョコ、取れちゃってるよ・・・」
熱を帯び掠れた声でそう囁く鬼太郎の指が蜜壺を弄り、舌が花芯を転がす。
「にゃぁ・・・ん・・・きたろぉ・・・おかしくなっちゃ・・・う・・・」
甘い声を上げ快感に身を震わせるネコ娘を彼の隻眼が闇の色を映し見つめた。
−−−このまま壊れてしまえばいい・・・もうボクなしでは生きられぬ程
キミが壊れてしまえばいいのに・・・ だってボクはもうとっくに・・・−−−
力強く脈打つ鬼太郎自身がネコ娘の蜜壺奥まで差し込まれた途端、
それは彼に吸い付き絡み付く。
鬼太郎の全身をゾクゾクした快感が駆け巡るが、彼女の蜜壺は容赦無く彼を締め上げ
今度はヤワヤワ包み込む動きを見せる。
鬼太郎の舌がネコ娘の口内を弄り、指がツンと尖った胸飾りを摘むと
鬼太郎の背に甘い痛みが走った。
快感に身を委ねたネコ娘が我を忘れて爪を立てたのだろう・・・
彼が満足そうな笑みを浮かべ、動きを速めた。
「いにゃぁ・・・きたろぉ・・・いっちゃう・・・ん・・・」
鬼太郎の腰に廻されていたネコ娘の片足がピンっと伸び、
蜜壺が一段と鬼太郎自身を締め付けると、彼も我慢の限界を迎え
そのままネコ娘の胎内奥深くに熱を注ぎ込んだ・・・
グッタリと意識を手放したネコ娘を鬼太郎の隻眼が見つめる。
その隻眼には、眩しいばかりの笑顔を振り撒き黒鴉や蒼坊主にチョコを手渡す
ネコ娘の姿が映し出されていた。
−−−いつか・・・いつかボクは本当にキミを壊してしまうかも知れないよ・・・ネコ娘・・・−−−
風呂場で気を遠のかせたネコ娘が目を覚ますとそこは部屋の中だった。
身体中のチョコを洗い流し、彼女を抱き上げ部屋に寝かせ、毛布まで掛けてくれたのは彼だろう・・・
微かに窓の外から彼の声が聞こえてくる。
ソッとネコ娘が覗くと、彼が化け烏を集めて一羽ごとに丸めた黒い物を口に放り込んでいる。
−−−???−−−
暫くすると玄関の開く音が聞こえ、鬼太郎が戻って来た。
「鬼太郎・・・化け烏に何あげてたの?」
不思議そうに聞くネコ娘に鬼太郎が
「だって・・・今日はチョコの日だからね。
風呂場のチョコを化け烏に丸めてあげたんだよ・・・捨てるのは勿体無いだろ?」
得意そうな顔で答えた。
「鬼太郎・・・バレンタインは2月14日・・・明日よ!」
毎年手作りのチョコをあげてるっていうのに・・・ネコ娘の瞳が縦に伸びる。
「えっ?・・・だったら風呂場のチョコ、残しておけば良かったよねぇ・・・
明日も楽しむために・・・さ」
ニヤニヤ笑う鬼太郎にネコ娘が真赤になって叫ぶ。
「鬼太郎のバカぁ!!もう知らない!!」
それでも・・・一日違いでも・・・チョコの日をやっと覚えてくれた鬼太郎に
明日はご褒美をあげてもいいかな・・・
ネコ娘が心の中でそう思ったのは勿論鬼太郎には内緒の話・・・である。
終
閉じてお戻りください
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