「はぁ〜・・・」
茶碗風呂に湯を注ぎ足しながら、鬼太郎が大きな溜息を吐く。
「なんじゃ鬼太郎・・・悩み事か?」
湯船の縁に手を掛け、目玉の親父は身を乗り出した。
茶碗の風呂に浸かるほど小さな身体では息子に父親らしいことを何もしてやれないが
相談事だったらいくらでも聞いてアドバイスしてやることが出来る。
しかし鬼太郎は
「・・・何もないです・・・」
そう答えただけで、自分で自覚は無いのだろうが、また溜息を吐いた。
−−−ネコ娘・・・か・・・−−−
息子・鬼太郎が何かに悩んでる事はその溜息の回数と大きさでわかる。
この数日、ずっとこの調子なのだから・・・
それでも相談してこないのは彼の娘に関係することだからなのだろう。
そう言えば・・・この処、毎晩の様にネコ娘の家へ行く鬼太郎だが
泊まることも無く、すぐに帰って来てはソッと自分の布団に潜り込み溜息を吐いているのを
この父は気付いていた。
−−−また喧嘩でもしおったか?まぁ・・・いつものことじゃが・・・−−−
喧嘩・・・と言うよりは鬼太郎の鈍感さにネコ娘が一方的に怒ると言った方が正しいのだが・・・
それでも、またすぐに元通りの二人になるのだ。
鬼太郎とネコ娘・・・どちらもそう長くは離れていられないのだろう・・・
−−−仔猫のじゃれ合いみたいなもんじゃな−−−
目玉の親父が笑みを零すその傍で、また鬼太郎が溜息を吐いた・・・
目玉の親父の言う様に、鬼太郎はこの処毎日の様にネコ娘の家へ行っていた。
が、バイトの疲れの所為か、話しているうちにネコ娘がすっかり寝入ってしまうのだ。
無論、鬼太郎はネコ娘を求めて通っているのだが、寝ている彼女を起こしてまで
いたす訳にもいかず、布団を敷きネコ娘を着替えさせ、抱き上げ布団に運ぶと
ひとり家路につくのだった。
それでも・・・
−−−ボクの想いはネコ娘の身体にちゃんと刻んでいるけど・・・ね・・・−−−
−−−なんで?なんで寝ちゃうんだろう・・・−−−
最近ネコ娘は何故か眠くて眠くて鬼太郎が遊びに来てくれても吸い込まれるような睡魔に襲われ
気が付くと朝になっている。
ちゃんとパジャマを身に着け布団で目覚めるのは鬼太郎がそうしてくれるからだ。
決して自分で着替え、布団を敷いている訳ではない・・・だって・・・
−−−朝起きると増えてるんだもん・・・−−−
日に日に増していくネコ娘の身体に散らされた花びら・・・
鬼太郎の無言の要求・・・なのだろうか・・・?
とうとう今朝起きると首筋にまで散らされていた。
−−−これじゃ制服に着替えたら見えちゃうよぅ・・・−−−
仕方なくネコ娘は首筋の花びらに絆創膏を貼って出勤したのだ。
最初にそれに気付いたのは今、同じバイト先に勤務しているロクロだった。
「ネコちゃん・・・それって・・・まさか?」
首筋の絆創膏なんて、あまりにベタだ。
「ち・・・違うよ!!料理してて油が・・・そう!油が跳ねてちょっと火傷しちゃっただけよぅ!」
顔を真赤にして言い訳するネコ娘に
「そ・・・そうよねぇ〜!・・・な訳ないわよねぇ〜!」
自分の下世話な勘違いにロクロもまた顔を朱に染める。
どうやらネコ娘の苦しい言い訳を信じてくれたようだ・・・
ネコ娘は内心、胸を撫で下ろす。
「さっ!ロクちゃん、仕事!仕事!!今日も一日頑張りましょ!!」
今夜も鬼太郎はネコ娘の家へやって来た。
調度ネコ娘は風呂上りで、彼女の濡れた髪や首筋に鬼太郎の一処に早くも熱が集まる。
この処、ずっとお預けをくっていたのだから仕方が無い。
「にゃっ!忘れてた!」
ネコ娘がおもむろに淡萌黄色の蝋燭に火を点ける。
その蝋燭に鬼太郎は見覚えがあった。
最近眠れないとボヤくねずみ男に、いい物があると渡した安眠作用の薬草を練り込んだ蝋燭だ。
幽霊族の自分にはその作用も効くことはないが・・・
「それ・・・ボクがねずみ男に渡した蝋燭だけど・・・なんでネコ娘が・・・?」
「なんでって・・・ねずみ男の奴が鬼太郎に頼まれたって私にくれたのよ?
『いい香りがするからボクが来た時に点けて』って言ってたって・・・
だからこの処、鬼太郎の下駄の音が聞こえると蝋燭に火を点けてたんだけど・・・違うの?」
如何わしい商品を人間に売り付けようとしていたねずみ男を捕まえて
脅したことがあったが・・・その復讐のつもりなのだろうか・・・
−−−面白いことを・・・今度は脅すだけじゃ済まないよ・・・ねぇ・・・ねずみ男・・・−−−
「鬼太郎?」
薄い笑いを口元に浮かべる鬼太郎にネコ娘が戸惑ったような声色で呼び掛けた。
「ネコ娘はあいつに騙されたんだよ・・・それにボクはそんな蝋燭よりももっといい香りを
知ってるのに、頼む訳ないじゃないか・・・」
淡萌黄色の蝋燭を吹き消しネコ娘ににじり寄ると、その朱に染まる頬に手を伸ばした。
−−−眠り猫・・・今日は寝られないかも知れないねぇ・・・−−−
鬼太郎の唇がネコ娘の首筋に近づき、花びらに舌を這わす。
「んにゃ・・・ぁん・・・きたろ・・・」
ワザと見える場所に残した花びら・・・他人に気付かれないかとネコ娘は
今日一日、羞恥の表情を浮かべていたことだろう・・・
でも・・・それも仕方ない・・・
−−−キミはボクのモノで・・・花びらはその印なのだから・・・−−−
いつもの様に鬼太郎がネコ娘の衣服を脱がす・・・が、今夜は脱がすだけでいい・・・
彼の隻眼に大きすぎも小さすぎもせず、鬼太郎の掌に心地好く収まる二つの果実と
そこに刻まれた印が映り喉が鳴る。
突起を舌や指で弄び吸い付くと、ネコ娘が堪らず畳を爪でカリリと掻いた。
鬼太郎の左手が小さな三角の布の中に差し入れられると、少し抵抗するかのように
彼女が身を捩った。
鬼太郎がネコ娘の顔を窺う・・・
「だって・・・灯も点いてるし・・・鬼太郎も・・・脱いでよぅ・・・」
この言葉を言うだけでもネコ娘は羞恥心の塊の様に耳まで真赤になっている。
___キミが脱がせて・・・___そう言いたい処だが、朱に染まり顔を逸らしているネコ娘には
無理な話だ・・・
それに暗闇でも猫目のきく彼女に灯りは関係無いと思うが、気持ちの問題なのだろう。
鬼太郎は部屋の灯を消し、ネコ娘の唇を割り舌を絡めると、そうしたまま自分の衣服を全て取り去った。
先が濡れ脈打ち隆起した鬼太郎自身がネコ娘の身体に触れる度に
彼女の身がピクンと跳ねるのが楽しい。
ネコ娘が身に付ける三角の小さな布を剥ぎ取り、鬼太郎が顔を近づけると
蜜壺からは蜜が溢れ、男を誘い狂わす香りを放っている。
舌と指が花芯と蜜壺を捕え弄ぶ・・・暫くこうして彼女を味わっていたいが
ずっとお預けをくっていた彼自身がもう限界だ。
鬼太郎は身を起こすと、ネコ娘の蜜壺に彼自身を埋めた。
ウネウネと蠢いたかと思うと、吸い付き絡み付く・・・ネコ娘を知ってからは
他の女を戯れでも抱く気にならない。
妖艶に濡れる瞳も、薔薇色に上気する頬も、吸い付くような滑らかな白い肌も
−−−未来永劫決して離しはしない・・・ネコ娘の全てはボクのモノだ・・・−−−
ネコ娘の手首を押さえつけ、自分の想いをその身体に刻み付ける様に
荒々しく彼自身を行き来させる。
「にゃぁぁん・・・きたろ・・・もう・・・堕ち・・る・・・」
ネコ娘が身体を反らすのと同時に蜜壺が鬼太郎自身を締め上げ
彼も耐えることなくその熱を彼女の奥深くに放ち、堕ちていった・・・
鬼太郎が何度目かの熱をネコ娘の胎内に注ぎ入れた時には
もう外は白々と明るくなり始めていた。
きっと暫くの間彼女は気を遠のかしたままだろうが
今日はバイトが休みなので鬼太郎はそのまま彼女を起こさないようにソッとネコ娘の家を後にした。
ゲゲゲハウスに戻り、新聞に目を通す父親に挨拶をすると
そのまま崩れる様に眠りに落ちていった。
もうその唇があの大きな溜息を吐くことは無いだろう。
目玉の親父の瞳に満足そうな笑みを浮かべた鬼太郎の寝顔が映っていた・・・
終
閉じてお戻りください
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