不安


夕闇に包まれた妖怪横丁・・・
ネコ娘は人間界でのアルバイトを終え、つるべ火燈る灯篭を潜り戻って来た。
胸には何やら沢山の雑誌を抱え、ずりずり滑り落ちそうになるのに一瞬気を取られてしまった。
丁度その時、高い塀の角を曲がって来たねずみ男とモロに

ガッチーーーーーーーーーン!!

正面衝突して二人ともに弾かれた様に尻もちをついてしまった。

「イタッ〜い!!あっ!ねずみ男じゃない!!あんたどこ見て歩いてんのよ!!」

「このバカ猫!!お前が他所見しながら歩いてやがったんじゃねぇかよ!!
 ・・・おっ?なんだこれ?」

地面にはネコ娘が抱えていた沢山の雑誌がブツかった衝撃でばら撒かれ
その一冊がねずみ男の目に留まった。

「アパート・マンション情報誌?・・・ってお前・・・まさか、人間界に住むつもりなんじゃ・・・」

ネコ娘は慌てて散らばった雑誌を拾い集め、

「あんたには関係無いでしょ!!」

フンッとそっぽを向き、角を曲がって行ってしまった。
この時ネコ娘は気付かなかった・・・まだ雑誌を一冊残したままだということに・・・

ねずみ男はひとりになると自分の尻の下から雑誌を手に取り暫し眺めた。

−−−どうでもいいけどよぅ・・・またオレは巻き込まれちゃったワケ・・・?−−−

ネコ娘がどこに住もうが、自分には全く関係無い。
あの女ならどこに行ってもまぁまぁ上手くやっていくだろう・・・
・・・でも・・・あいつは・・・あの鬼は決して許しはしない。
出来ればこのまま見なかったことにしたい・・・が・・・
それこそあの鬼野郎にどんな目に遭わされるか分かったもんじゃない・・・
自分も・・・そして・・・あの猫女も・・・だ・・・

ねずみ男は一瞬身震いすると来た道をゲゲゲハウスへと一目散に駆けて行った・・・





「・・・で、これがその雑誌なんだけどよぅ・・・」

卓袱台の上にねずみ男が雑誌を置く。
鬼太郎はそれにチラリと目線を向けたが、その表情はピクリとも動かず
何を考えているのか分からない。
ここに目玉の親父でも居れば、助け舟でも出してくれるのだろうが
生憎出掛けているようで今は鬼太郎とねずみ男の二人っきりだ。
ねずみ男の背にイヤな汗が伝う・・・
何故なら・・・
無表情の鬼太郎の纏う妖気がねずみ男にさえ分かる位に深く冥い闇の色を帯びている・・・

これ以上ここに居るのはヤバい・・・本能でそう感じたねずみ男はソソクサと立ち上がると

「じゃ・・・オレ様はこれで・・・」

言うが早いか逃げる様にゲゲゲハウスを飛び出した。

−−−庇ってやりてぇけどよぅ・・・てめぇの身を守るだけで精一杯ってもんだぜ・・・
   許せ!ネコ娘!!−−−




森の奥のネコ娘の家・・・
ネコ娘はテーブルの上に何冊も情報誌を広げ、気になる物件に赤鉛筆で印を付けている。
___しかも鼻歌を唄いながら・・・

−−−へぇ・・・キミは人間界に行くのがそんなに楽しみなのかい・・・?−−−

ネコ娘が人間界に出入りするようになってからずっと鬼太郎の心に中にあった漠然とした不安・・・
彼女にとっては何の変化も無い退屈な妖怪横丁を飛び出し、
いつかあの大きな瞳に刺激と魅力に溢れて映る人間界に飛び込むのではないか・・・

鬼太郎が恐れていたいたことが今、現実となって彼の隻眼に映る・・・

自由で気儘・・・そして好奇心旺盛な猫妖怪に、どれだけこの胸が掻き乱されるか
きっと彼女は気付いてもいない・・・
ボクは・・・ネコ娘を手放す位ならこの身を狂気の鬼に変え、彼女の躯とともに地獄に堕ちていく・・・

−−−ボクの闇にキミを捕り込んでしまうよ・・・その覚悟は出来てるのかな・・・
   ねぇ・・・?ネコ娘・・・−−−




雑誌に目を落とすネコ娘が背後に気配を感じ振り向くと俯いた鬼太郎が立っていた・・・

「にゃっ!!鬼太郎じゃない!ビックリさせないでよぅ!
 一体どうしたの?・・・何かあった?」

彼の只ならぬ気配に大きな事件でも起きたのかとネコ娘の表情に緊張が走る・・・
が・・・鬼太郎はその表情をも誤解してしまう。

−−−よほどボクに知られたくなかったようだねぇ・・・でも・・・もう遅いよ−−−

鬼太郎は掌を上に向けるとそこに小さな炎が点り、その炎がテーブルの上に置かれた雑誌を
一冊・・・また一冊と焼いていく・・・

「にゃっ!鬼太郎!!なんでこんなこと・・・?」

慌てて消そうとするネコ娘を制し、その顎を軽く掴むと自分に向けさせ

「ボクが許すと思った・・・?」

薄い笑みを浮かべ、そのまま彼女の唇を奪い組み敷いた。

だが、ネコ娘の方は鬼太郎が何を言ってるのか・・・何故怒っているのか分からず
鬼太郎の唇から逃れようとするが、そんな彼女に鬼太郎の闇はますます濃く広がっていく・・・
そう・・・ここを出て行くのは人間界に男が出来たからなのではないかと・・・

「拒絶?・・・誰かに操を立ててるとでも?・・・
 でもねぇ・・・ネコ娘・・・その身に残るボクの痕はどう言い訳するつもりだい?」

鬼太郎が彼女の身に着けているブラウスを荒々しく左右に開くと小さなボタンが弾け飛び
白く肌理の細かい肌が露わになった。
そこにまだ先日の彼の名残が幾つも残されている。

「き・・・鬼太郎・・・止めて・・・」

自分を拒む言葉を吐くネコ娘の手首を掴むと鬼太郎はその手で己の首筋を撫でた。

「ボクが嫌ならキミの鋭い爪でこの首を引き裂けばいい・・・
 そうすればボクの命を取ることは出来なくとも逃げる隙だけは出来るよ・・・
 ・・・あぁ・・・キミの武器は爪だけじゃないよねぇ・・・
 その尖った牙でボクの舌を噛み切ることも出来るんだっけ・・・」

薄い笑顔の鬼太郎がその隻眼に闇を映し、ネコ娘の唇を強引に割り舌で口内を弄る。
淫靡な水音とともにネコ娘の頬にどちらとも知れぬ唾液が伝い落ちていく・・・

鬼太郎がどうしてこんなことをするのか・・・全く分からない・・・
でも・・・それでほんの少しでも彼の心に吹き荒れる嵐を癒すことが出来るのなら・・・
自分はそれを受け入れるだけだ・・・
だって・・・それが・・・彼にとっての自分の存在価値・・・

___ネコ娘はもう抵抗はせず、鬼太郎のこの行為を受け入れた。

鬼太郎がネコ娘の背に手を差し入れ、ブラジャーの留め金を外すと
ピンクの蕾を口に含み舌で転がす。

「にゃぁ・・・あん」

ネコ娘の身が小さく跳ね、甘い声が零れた。

−−−キミを満たすことが出来るのはボクだけ・・・−−−

唇で胸の蕾を弄びながらも、指は小さな三角の布に隠された花芯と蜜壺に伸ばされる。
もう既に蜜壺からは蜜が溢れ鬼太郎の指が差し入れられると途端にヤワヤワと包み込み
締め付けてきた。

「イヤだって言いながらも・・・ほら・・・こんなに・・・」

蜜が絡み付く己の指をネコ娘に見せつける様に鬼太郎の舌が舐め取る。

「いにゃ・・・そんなこと・・・しないで・・・」

ネコ娘の瞳が涙で潤む・・・が、彼女は羞恥心を刺激されればされるほど
その瞳が艶を帯びることを鬼太郎は知っている・・・

−−−ボクが教え込んだその通りに・・・ねぇ・・・−−−

鬼太郎の指と舌が的確にネコ娘の感じる部分を刺激する。

「にゃ・・・もう・・・イッちゃ・・・にゃぁぁぁ・・・ん」

ネコ娘の蜜壺が鬼太郎の指を一層締め付けるとそのまま彼女は波に呑まれていった・・・

「ボクを拒絶してた割にはもうイッちゃったのかい?
 あぁ・・・あれはポーズ?キミは犯されるのが好きなんだっけ・・・」

「そ・・・そんなことにゃ・・・い・・・にゃぁん!」

鬼太郎がネコ娘の下着をずらし、脈打ち先を濡らした彼自身に蜜を絡み付けるように
くちゅくちゅと撫でるが、それ以上先に進もうとはしない。
艶を帯び揺れる瞳のネコ娘には分かっている・・・鬼太郎が何を要求しているのか・・・

___ボクが教えた通りにおねだりしてごらん・・・

恥かしい・・・恥ずかしくて堪らない・・・なのに・・・
彼のあの隻眼に見つめられ、意地悪な言葉を投げ掛けられると
この身にぞくぞくする程の熱が駆け巡りとても抗うことなど出来なくなる・・・

「きたろぅ・・・お願い・・・もう我慢できな・・・」

ネコ娘の言葉が終らぬうちに鬼太郎の楔が蜜が溢れる蜜壺へ差し込まれた。
彼ももうとっくに我慢の限界だったのだ。

甘い喘ぎ声を上げるネコ娘の胸の蕾を指で摘む。
するとそれに反応して蜜壺が鬼太郎の楔を更に締め付け、彼を堪らなくさせる・・・

「くっ・・・」

熱い吐息も・・・火照った肌も汗も・・・二人の全てがひとつに混じり合い・・・やがて・・・
二人は深く暗い奈落の底へと堕ちていった・・・



ネコ娘の携帯電話がメールの受信を知らせる音楽を奏でる・・・が、まだ彼女は意識を手放したまま
傍らで横たわっている。
鬼太郎はその携帯に手を伸ばし、受信メールのボタンを押した・・・

『こんばんは。ミサキです!今回は私のアパート探しを手伝ってくれて感謝!!
 それで、出来れば最寄りの駅まで_____』

あの沢山の情報誌は人間の友達のアパート探しを手伝っていただけだったのだ。

−−−あいつ・・・このお礼はちゃんとしなきゃ・・・ねぇ・・・−−−

鬼太郎は横たわるネコ娘の頬に残る涙の痕をソッと手で拭い立ち上がると
そのままネコ娘を起こさないように彼女の家を後にした・・・



ここは月明かりが照らす人間界。
いつもの様にねずみ男がゴミ箱を漁っている。

「おっ!封も開けられてねぇ食パンだよ!!今日はツイてんぞ〜!!」

そう言ってカビだらけのパンを持ち上げた瞬間、誰かに肩を掴まれた。
振り返るとニッコリ笑った鬼太郎が街灯の明かりを背に立っている。



「なんだ・・・鬼太郎じゃねぇかよ!!
 あっ!これか?・・・いくらお前の頼みでもこれは譲れねぇ・・・」

ねずみ男のその言葉が終わるのも待たず、鬼太郎は彼の襟首を掴むと
暗い露地裏へと引き摺りこんで行った・・・





                  終



「elixir」雫 里緒 様 に捧げさせて頂いた裏SSです。

素敵な挿絵は雫 様に頂戴いたしました。

いつも有難うございますvv





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