新年


ゲゲゲハウスの大晦日・・・その台所でネコ娘がテキパキと年越し蕎麦の用意と
新年の料理の支度をしている。
ネコ娘が来る前までゴロゴロしていた鬼太郎も彼女に怒られ
今は大掃除の真っ最中だ。
目玉の親父は・・・この日も相変わらず子泣きの処に碁を指しに行っていた。

「ネコ娘、こっちは大体終わったから・・・料理、手伝おうか?」

「いいわよぅ!そっちでお茶でも飲んでて!」

ネコ娘にそう言われ、卓袱台のいつもの席に座ると
ピンクのリボンとエプロンを揺らめかし楽しそうに料理をする彼女の後ろ姿が
真っ正面に見える。

−−−いつか・・・ずっとこんな風に・・・−−−

自然と彼の隻眼が弧を描く・・・が、遠くからこちらに向かって来る
あの男の気配を感じ

「全く・・・いつもボクの邪魔をしてくれるよ・・・」

鬼太郎が溜息雑じりに小さな声でポツリと呟く。

暫くすると案の定、入口の筵を上げねずみ男が顔を覗かせた。

「なんだ!なんだ!!新婚さんごっこでもしてやがったのか〜?!」

「アンタのことなんて誰も呼んでないわよ!!」

行き成り来て下世話にからかうねずみ男にネコ娘は猫化して怒ったが、
そんなことは慣れているとばかりにズカズカと上がり、鬼太郎の横に座る。
この男、計ったようにいつも料理が出来上がる頃に現れ、
当然の様に食べて行く。
いつものことだ・・・鬼太郎もネコ娘ももう慣れている。

次々と新年の料理が出来上がり、後は化け烏に乗り目玉の親父が帰って来たら
年越し蕎麦を作り、皆で食べるだけだ。

「ネコ娘、お正月は着物を着るのかい?」

「うん!着物で新年の挨拶まわりするのよ」

「だよな!着物でも着てねぇとよ、女らしく見えねぇ・・・イテッ!!」

鬼太郎の下駄がねずみ男の後頭部に命中した。
主の心を敏感に察知しての行動らしい・・・



化け烏が羽音を響かせ、目玉の親父が帰って来た。

「おぉ!凄いご馳走じゃな!ネコ娘、いつもすまんのぅ」

「全然!!私が好きでやってるんだもん。気にしないで!」

「ふんっ!新婚さん気分でチャラチャラと・・・フッ!!フガフガ・・・」

今度はちゃんちゃんこに口を塞がれた。



もうすぐ除夜の鐘が鳴り始める・・・
ネコ娘が作った年越し蕎麦を鬼太郎が運び終えると調度最初の鐘の音が響いて来た。

「一つの鐘の音で人間の煩悩一つが払われていく・・・今年一年で溜め込んだ百八つの不浄を
 百八つの鐘の音で払い、新しい年を綺麗な気持ちで迎えるんじゃよ・・・
 じゃが、ねずみ男・・・お前さんのは鐘の音でも払いきらんかも知れんの!」

すでに蕎麦を食べ終え、正月の料理にも手を伸ばそうとするねずみ男のその手を
目玉の親父が小さな手で叩いた。

「さっ!わしらもいただこう!」

除夜の鐘が響く中、蕎麦を食べながら皆が今年一年の出来事など他愛の無い話で
盛り上がる。



そろそろ除夜の鐘の音も残り一つだ・・・
目玉の親父もねずみ男もウトウト舟を漕いでいる。

ゴォォォォォォ・・・・・・・・・ン・・・・・・・・・


「鬼太郎!明けまして おめでとう!!」

「おめでとう。これからも・・・よろしく・・・」

そう・・・これからも、ずっとずっと永遠に・・・
だってキミはボクの・・・ボクだけのネコ娘なのだから・・・



             



        
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