鬼太郎がネコ娘を抱え、彼女の家に着くと
砂掛け・ロクロが寝床を用意して待っていた。
鬼太郎は静かにネコ娘を布団に横たえると
自分はそのすぐ傍に座った。
砂掛けがネコ娘を起こさぬように小声で話しかける。

「親父殿から聞かせてもろうたよ。
 最近ネコ娘の様子が変だと化け烏に探らせておったそうじゃな。
 お前さんも人が悪い。それならそうと言ってくれれば良いものを・・・
 さっきは怒鳴って済まなんだな」

「ボクもハッキリしたことは判らなかったんで・・・
 ボクの方こそすみませんでした」

鬼太郎は砂掛けとロクロに頭を下げたが
『わからなかった』・・・というのは嘘だった。
常にネコ娘の気配を探っている鬼太郎は、すぐに異変を感じ取った。
暫くはネコ娘からの相談を待っていたが、ネコ娘は鬼太郎と会っても
いつもの通り振舞うばかりだった。
そこで業を煮やした鬼太郎は化け烏に探らせることとしたのだ。

今回は間一髪で間に合った。
しかし、次は?
次も間に合うことが出来るのか・・・?
こんな想いをするぐらいなら、今すぐに彼女の全てを奪い取り
誰の目も届かない所に閉じ込めてしまいたい衝動に駆られた。

「ボクもアイツと・・・」

思わず声に出てしまい慌てて周りを見回したが
すでに砂掛けとロクロの姿はなかった。
ネコ娘が目覚めた時、鬼太郎と二人の方が話しやすいだろうと
気を利かせたのだ。

鬼太郎の手がネコ娘の柔らかい髪を撫でると
大きなアーモンド型の瞳がゆっくりと開いた。

「ネコ娘、わかる?」

少し間を空けてネコ娘が頷く。

「何も心配することはないよ。
 全部終わった・・・」

ネコ娘が鬼太郎に抱きついた。
その細い肩は振るえていて、まだ恐怖心でいっぱいのようだ。
鬼太郎もネコ娘を抱き返す。

「恐かった・・・恐かったよ、鬼太郎・・・」

小さな声でそれだけを言うと後は涙で言葉にならないようだ。
ネコ娘の髪や抱きしめた身体からネコ娘の甘い香りが鬼太郎の鼻を擽る。
いつもなら押し倒したい衝動に駆られていただろう。
いや・・・今だって全く無いわけではない。
が、せめて今日ぐらいは、彼女の望む優しい鬼太郎でいてあげよう。

−−−ダッテ、ボクモ イツ アイツニナルカ ワカラナイノダカラ・・・−−−

鬼太郎が薄い笑いを浮かべたのを
ネコ娘は知らない・・・




                     


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